好きな舞台の作り手さん

ask.fmにいただいた質問の回答です

 

すきな舞台の作り手さんがいたら聞かせてください。 また、作り手さんが気になったエピソードなどあれば教えてください。

 

「作り手さん」って言葉、いいですね。
脚本家とか演出家とかでなく、作り手さん。なんかほわっとする。
ひとりには絞れないので、「この人が作っている作品はできる限り観にいくぞ」と思っている人を挙げてみます。

 

中島かずきさん
ご存知、劇団☆新感線の劇作家さんです。
かずきさんの書くお話好き。超好き。
いのうえ歌舞伎シリーズのような少し重たいものもあるんだけど、それでも、週刊少年ジャンプ系のお話が好きな人はきっと好きなんじゃないかなっていう、熱さと爽やかさに溢れているところが大好きです。
「髑髏城の七人」の捨之介と蘭兵衛と天魔王の関係とか、「蛮幽鬼」や「シレンとラギ」の狼蘭族の設定とか、バッリバリの厨二設定がいっぱいあるんだけど、それを子ども騙しでなく物語として昇華させるところが本当に見事で、わたしはいつも「大人の少年マンガ」だなと思っています。

かずきさんのセリフはリズムがとてもよくて、物語のスピード感と相まって、聞いていて、観ていて、すごく心地がよいです。
5・7・5調というのでもないんだけど、なんていうかこう、昔ながらの日本語独特のリズムというか。
五右衛門シリーズ(ジパングパンクはそうでもなかったかな)とか顕著で、見得きりのセリフとか本当に格好良くて気持ちがいい。
そういう見せ場!っていうセリフ以外の細かいところも、粋で快活な言葉選びが多くて、あの大きな舞台で、大きな音響の中で映える、格好いいセリフ回しで大好きです。

それからかずきさんの作り出す登場人物も好き。
メインキャラクターはもちろん、敵役も格好良かったり、愛嬌があって憎めなかったり、キャラクターとそれを演じる人への愛情をたくさん込めて作り上げているんだろうなって思える。
好きすぎて、重症化すると自分の好きなキャラが物語の終わりの先の未来で幸せに暮らせているだろうかと考えて、ふいに泣いたりするから、わたし。こじらせすぎ。
ちなみに、一番最近こじらせたのは「蒼の乱」の夜叉丸。夜叉丸かわいいよ夜叉丸。ゲキシネ待ち遠しい。

ただね、かずきさんが脚本書いてたらなんでもオッケーかっていうとそんなこともなくって、外部の脚本作品も何作か観たけど、それは刺さらなかったのですよね、全然。
やっぱりいのうえさんとのタッグが好き。
いのうえさんも、他の脚本家さんの作品を演出してるの観てるけどやっぱ刺さんない。
ふたり揃ってくれないと!

 

土田英生さん
劇団MONOの劇作家で演出家で俳優さん。
土田さんの作品を見始めたのはついここ数年なんだけど、土田さんの作り出す優しくて切ない世界観が本当に大好きで、観にいくとだいたい数日は引きずるし、数週間数ヶ月経ったあとに、ふと思い出して胸が締め付けられるような思いをすることもあります。

ここではない、けれどここと少し似ているどこかで起こる出来事。
舞台の上は閉鎖的で、物語のなかの人たちは、その閉じられた空間で生ぬるい、でも幸福な生活を営んでいる。
どこかSFチックな、でも現実のような、そんな世界観の作り方が絶妙で、説明しすぎることは決してないんだけど、薄いヴェールの向こうに、ここではないどこかが微かに透けて見える。
閉鎖された舞台の向こうの世界は、一見何の変哲もないけれど、その実、重く、暗いものが垂れ込めていて、それがじわりじわりと舞台の上を蝕んでいく。
でもそれは決して不幸ではなく、舞台の上の人たちは笑ったり泣いたり怒ったりしながら、生ぬるく穏やかに生きていく。
そんな、やさしい終焉の物語。

そうたくさんの作品を見ているわけではないけれど、土田さんの書くお話は、本当にどれも大好きです。
先日まで上演されていた「ぶた草の庭」も例に漏れずとてもよかった。
観る度に、ああ観てよかったなぁと思える作品を作る人です。

演出家としてもとても素敵で、空間の使い方や会話の間もすごく好み。
土田さんの「燕のいる駅」という作品が大好きで、10年ほど前、別の方の演出で観たときは特になんとも思わなかったんだけど、3年前、土田さん演出で書き直されたこの作品を見て、すごいってなった。胸打たれるってこういうことかって思った。
立体感のある舞台セットと、それを生かした空間演出が、押し付けがましくなく、でもとても綺麗で好きです。
(余談ですが、MONOの舞台美術は劇団員である奥村さんがやってるんだけど、ごうくんの「夜中に犬に起こった奇妙な事件」の舞台美術も手がけています。)

劇団公演は年に1回しかないけど、チケット代もそう高くないので、もし機会があったらぜひ観てください。
本当に素敵だから、たくさんの人に見てほしい。

 

ケラリーノ・サンドロヴィッチ
ケラさんというより、ひっくるめてナイロン100℃なんですけども。
ナイロンに関してはもう芸術作品だと思っていて、観劇というよりは美術鑑賞くらいの心持でいます。
美術も、映像も、音楽も、役者も、絵画みたい。本当に美しい。
ただ綺麗なだけでなく、少しほの暗い、心がざわりとする、そんな空気感も好きです。
初日から完璧と思えるくらいの完成度を見せてくれるところも、芸術作品っぽさを感じさせます。
いつ観にいっても、同じクオリティを提供してくれる。すごい。

お話やセット、どれも好きなんだけど、ナイロン作品で一番好きなのは映像です。
上田大樹さんの映像が好きで、そしてナイロンでのその使い方が本当に好き。
舞台セットに映し出される映像がすごく綺麗で、その映像込みで舞台美術が完成する。
もちろん作品作品で映像は異なるんだけど、どれも本当に美しい。
「2番目、或いは3番目」の冒頭で、光の線のみで描かれた街並みを映し出すっていう演出があって、暗闇に浮かび上がるそれがとても綺麗だったのだけど、映像がパッと消え舞台に照明が当たると、そこには廃れた街並みが広がっていて、息を飲みました。
そういう、有無を言わさず呼吸を止めるような演出が、恐ろしいのだけど、すごく好きです。
(ちなみにナイロンの映像を手がけている上田さんは岡田さんの「ザ・プロファイラー」の映像も作っている人です。
あのプロジェクションマッピングもすごく綺麗で好きでした。)

ナイロンの本公演ではないけど、ケラさんの作品で好きなのは「黴菌」。
ケラさんの女性の描き方がすごく好きなんだけど、「黴菌」は男性陣がとてもキュート。
男兄弟のいざこざを軸としたお話なんだけど、その中で末っ子の北村一輝さんが色っぽくて、でも愛らしくて、とても好き。もう一度観たいなぁ。

 

以上!
ほかにも好きな方たくさんたくさんいるけど、とりあえずパッと思いついた3名を。

これ書くにあたってwikiとか観てたら、自分はほんとにほんとに最近の一部の作品しか観られてないんだなぁって改めて思いました。
観たことないだけで、素敵な作品を作っている人は、きっとほかにもたくさんいるんだろうなぁ。
時間の面でも懐の面でも、全部全部というわけにはいかないけど、できるだけ貪欲に、たくさん舞台を観に行きたいなぁ。